土の効用|制作記録#7


散歩はアイディアに詰まったときにうってつけだ。特に、土の上を歩くのが良い。目に見えないエネルギーの流れが大地から足の裏を伝わってこみあげてくる。

河川敷の畔を分け入った私は、腕にチクチクとこすれる葉の痛みをくすぐったく思った。竹林のそばの緑の小道を通るとき、ひんやりした空気にひたひたと首筋をなでられた。6月の重たげな湿り気に、やっと夏らしさを思い出す。そういえば私はアイディアに詰まっていたのだった。知らずのうちに意識は切り替わっていて、のどがつっかえたような思考のスパイラルから抜け出していた。

これは土の効用だ。アスファルトは歩きやすくするために作られているので、歩く以外のことも考えられる。しかし、散歩は歩くことに集中するべきだ。できるだけ考えないようにしなければ、アイディアに詰まっている状態から解放されない。歩きにくければ歩きにくいだけよいのかというとそうではない。さすがに平日の昼から公園のアスレチックに没頭する大人はどうかと思う。精神的に思考から解放されるためであれば、見知らぬ土地に行けばいいのだが、夕方には帰らなければならないのでこれは難しい。やはり、土の上を歩くのが手ごろでよい。

では、土はどこにあるのか。これが意外と少ない。皇居周りの公園は歩道が整備されているし、芝生や土の地面に立ち入りはしていけなさそうな立て看板がある。噴水やせせらぎには子供たちが遊んでいるので、それを見ていても思考から解放されるが、不審者だと思われたくない。私のおすすめ2つある。まず、神社や寺などの宗教施設だ。砂利が敷かれていたり、踏み固められていたりするが、土は土だ。もう一つは河川敷。近くに大きな川がないと難しいが、適度に雑草が生えているし、土とも泥ともいえない良い塩梅のぬかるみがある。

散歩コースを設定するなら土の上を考えてみるといい、という話ではない。アイディアに詰まったときにどうするかという話だ。さまざまなアイディアの詰まりを解消する方法がネット上ではみられるが、散歩にしろソシャゲにしろどのみち思考から解放されることが目的だ。私は座りっぱなしか移動しっぱなしの1日を過ごすことが多いので、健康への考慮も込みで散歩にしている。歩き回る毎日を過ごしていれば、アイディアの詰まりはソシャゲにする。ログボは欲しい。要は自分に合った思考からの解放を見つけることが大事だ。

ここまで書いてなんだが、アイディアは何も思いついてない。なぜか人類滅亡後の世界ではサキュバスが繁栄してる設定のエロ漫画ネタを思いついたが、私はエロ漫画家でもエロ小説書きでもないのでツイッタランドに放流した。


文・saito

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